トロリー・ライン
EXHIBITION
企画展示
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紐をほどく
喫茶店でレモネードを飲んでいた。店の窓にふと映った市電は、懐かしい緑色をしている。
街の新陳代謝は激しく、それは、大きい街であればあるほどなおさらに激しい。
50年もすると、街角を見比べた時にそこにまだ佇んでいるものの方が珍しいくらいになってくるし、だからこそ古くからの姿を残しているものに価値がついたり、愛おしさを感じたりする。
電車だってそうだ。
50年もすれば、新型車両に置き換わっていたりだとか、塗装がフレッシュになっていたりだとか、あるいは路線が廃止になって、よその都市で走るようになっただとか。
なんら珍しい話ではないし、生きている街の中の営みなのだから、それはむしろ必然である。
街を走るリバイバルカラーの電車はタイムマシンのようなもので、街に昔から佇むストラクチャとマッチングした瞬間、その空間は一瞬だけタイムトラベルする。そして電車が過ぎ去ると、またそこは現代に戻る。
「私は若い頃、あの電車で苗穂まで通勤していたのよ」
喫茶店を切り盛りするおばちゃんが言う。この1年間、たくさんの人の思い出を紐解いてきた243号に、お疲れ様を。
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