トロリー・ライン
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それは春の嵐のようだった。
友人の原田氏から「大連にいる復刻塗装のトラムを貸し切ろう」と誘いが来た。
近年立て続けに塗装が復刻された大連のDL3000型。しかも3002号は90年代中頃の軽快で明るい塗装。当然、誘いを断る訳がない。
貸切当日の日曜日。
まだ朝の6時前だが、すでに車庫が動き始めている。掃除のおばちゃんが、3002号を磨いてくれていた。
赤旗を挿した美しい姿と対面する。思わず感嘆の息が漏れる。
寝起きの街に、復刻塗装の2台が飛び出した。
つりかけ駆動の音を高らかに響かせながら、電車は進む。
街は飯を煮炊きする香りに包まれ、腹が鳴る。
油条をつまみながら、電車を待つ。
あっという間に朝の部は終わってしまった。
雲はすっかり取れ、午後1時。
再び大連の街へ飛び出した電車を追い回す。
今回の大連貸切のコンセプトは「甦れ、1995年」
3002号が纏っているブルーとホワイトの軽快なカラーの電車が走り始めた頃だ。
発展目覚ましい中国の大都市において、30年も前の雰囲気を残す街区を見つけるのは容易い話ではない。
容易いことではないからこそ、隈なく街を歩き回る。
あっという間に陽は沈んだ。短すぎる1日だ。
しかし、まだここからがメインディッシュである。
期待に胸を躍らせ、私は民主広場の車庫へと向かった。
車庫では復刻塗装の2台が待ち構えていた。
ライトアップされた美しい姿に、感嘆の息を漏らすことしかできない。
夢の終わりはあっという間だ。
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